先輩のお見舞い
透矢さんの家に着いた。彩世ちゃんに迎え入れられて、氷水の入った洗面器と保冷剤、タオルを渡されて寝室に放り込まれる。
中に入ると透矢さんは寝ているようだった。
額に載せていたタオルを触ってみると、もう冷たさのかけらもなく、むしろほんのり温かかった。
(熱、高そうだな……)
起こさないように額をくっつけて熱を測る。そして額のタオルを氷水につけ直してまた額に載せる。
「あっつ……薬効いてねぇのか?」
彩世ちゃんから伝えられた熱を下げる際に冷やすべき場所…首、脇、鼠径部…保冷剤をタオルで包み、あてがっていく。
そのとき扉がノックされた。
入ってきたのは彩世ちゃんだった。
「これ、頭の下に敷いてあげてください。」
そう言って氷枕を差し出してくる。
「わかった、ありがとう。」
「熱どうですか?」
「かなり熱いから高いと思う。」
「そうですか…。兄貴が起きたらご飯食べさせて薬飲ませてまたすぐに寝かせましょう。」
「あぁ。ご飯作るのか?手伝うよ。」
「いえ、大丈夫です。ちゃちゃっと作ってきますよ。」
ガンッ!!ゴンッ!!
……おかゆか何かを作るのだと思っていたのだが、なにを作ろうとしているんだ?
そっと部屋を出て様子をうかがう。
キッチンでは彩世ちゃんが包丁で格闘していた。
「さ、彩世ちゃん!包丁はそんな持ち方したら危ないだろ!」
大根を切ろうとしているのだろうが危なっかしい。
慌てて駆け寄り、教えながら自分も包丁を持ち、切るのを手伝う。
なんだかんだあったがおかゆが完成した。
おかゆを食べさせるのは彩世ちゃんに託して、夕飯の時間を邪魔するわけにはいかないから、と言って透矢さんの家を出る。
おちなしやまなしただのおせわばなし
先輩は起きたら翔湊が作ったおかゆがあると言われ、嬉しそうにもぐもぐします。そのあと花束を受け取って、『見舞い後』の心理になります。