彼にふさわしい人

「翔湊はどんな人がタイプなんだ?」

「は?なんでそんなこと聞きたいんだよ。」

「や、なんとなく…かな。好きな人とかいないのか?」

なんとなく、普通の先輩後輩同士のただの普通の話題だ。
俺の返答に翔湊はあきれたようにため息をつく。

「はぁ…そういうあんたはどうなんだ」

「え?あー俺は……うん、誰とも恋仲にはならなくていいかな」

こっちに振られることは予想していなかった。今のところその予定はないし、好みのタイプだってべつにあるわけじゃない。

「で、どうなんだ?」

そうか、と言ったきり黙ったまま歩く翔湊の反応が気になって駆け寄る。

ふと、その場に立ち止まり、こちらを振り返った翔湊と目が合う。

「あんたが恋人を作らない限り、俺にも恋人はできないだろうな」

少し寂しそうに笑ってそう言うと、そのまますたすたと歩いていく。

「……は?」

なぜだか顔が赤くなってしまっているのがバレないようにしながら、先を進む翔湊を追いかける。

「ど…どういう意味だよ…」

「さあな。」

翔湊の隣に、彼にふさわしい人が現れるその日まで。今日も彼のとなりをそっと歩く。